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リテールテインメント入門<5>リハビリとしてのショッピング

つい最近まで飲食店や小売店だった建物が、老人ホームに建て替えられるというケースが増えている。高齢者の増加とともに、介護施設のニーズが高まっているのだ。また特別養護老人ホームには、各種補助金がついていたりして、うまみが大きいという事情があるケースもありそうだ。老人ホームに入ってくれれば、食事から介護まで施設が面倒を見てくれるので、家族の負担はぐっと下がる。

ところで特別養護老人ホームをはじめとする施設で暮らす高齢者が増えてくると、お昼過ぎから午後3時頃までのスーパーマーケットのアイドルタイムに、施設のスタッフやボランティアに付き添われて買物している高齢者の姿が目につくようになった。なかには軽い認知症の症状が出ている人もいて、付き添う人も大変だろう。重度の認知症の人は、病院への転院を要請されるケースもあるようだが、中にはショッピングによって記憶が戻ったりするケースもある。

例えば、老人ホームの食事には、デザートにプリンやゼリーが付いたりするのは当たり前だ。ただプリンといっても施設で出るものは、コストを安くするために、老人ホーム用の特性プリンがセットされることが多い。

しかし、スーパーマーケットに買物につれていってもらうと、洋日配売場に陳列されているデザートのなかに、江崎グリコのプッチンプリンを発見、その商品から「昔、子どもたちが好きだったわね」ということになり、かつての暮らしの記憶が蘇ってきたりする。これはコスト優先の施設のプリンにはない、メモリアルマジックだ。

つまり、老人ホームに入り買物する機会がなくなっている高齢者にとって、スーパーマーケットでさまざまな商品を目にしたり、イートインコーナーで紅茶とデニッシュでお茶したりすることで、気持ちが若返ったりする効果もあるのだ。したがって高齢化とともに施設に閉じ込めるのではなく、手間はかかるが買物や散歩に連れ出し気持ちを活性化させることも必要だ。自分の足で歩くか、車いすを利用するかは別にして、買物によるリハビリは馬鹿にできない効果がある。

SMチェーンとしては、老人ホームなどの施設と提携し、リハビリショッピングの受け入れをするのも、社会的意義の大きい販促になる。

ファミマ、ユニー、ドンキの新企業グループ誕生―得をしたのはどこか?

アメリカではシアーズが米連邦破産法11条を申請

3連休明けの10月9日週になって、日米とも小売業に大きな動きがあった。アメリカでは、かつて全米小売業トップに立ったこともあるシアーズが、米連邦破産法11条(日本でいえば民事再生法)を申請することが明らかになった。アメリカでは今年トイザラスも倒産したので、それに続く大手チェーンの経営破綻ということになる。

しかし、シアーズの経営破綻は、アメリカ小売業の変化を語るうえでは象徴的だ。シアーズは時代ごとに展開する業態は変わってきた。最後は百貨店とディスカウントストア(Kマート)が主たる事業だったので、それがともに衰退業態ということを考えれば、同社の倒産そのものは無理からぬものがある。とはいえ全米にまだ店舗網が整はない時代に、カタログ通販で基礎を築き、大型店の展開で全米一となったシアーズが、やがてネット通販のアマゾンなどに足元をすくわれたのは、時代のアイロニーを感じさせる出来事だ。

日本ではユニー・ファミマHD×ドンキHDの流通第3極が誕生

日本では同時期、ユニー・ファミリーマートHDがドンキホーテHDの株式の最大20,17%をTOBで取得、イオン、セブン&アイHDに続く事業規模4兆7,000億円の第3の流通グループが誕生することになった。ドンキホーテHDは、19年1月にユニーの株式の残り60%をユニー・ファミリーマートHDから取得、100%子会社とすることになった。同社は社名も「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」に変更することも発表した。また同社は、創業者の安田隆夫氏を、改めて非常勤取締役候補者にすることを決議、組織を挙げての取り組みとする方針だ。

しかし、ユニー・ファミリーマートHDからするとドンキホーテHDは、役員は派遣するとはいえ、持ち分適用関連会社にしかすぎず、企業グループとしての関係性は薄い。持ち分比率20,17%では競合他社が敵対的TOBを仕掛けて来れば防ぎようがない。ユニー・ファミリーマートHDとドンキホーテHDの企業連合は、イオンやセブン&アイのように、総合流通業をめざすうえで必要不可欠な業態を集めているわけではなく、かなり刹那的な流通グループだ。

今回の経営統合は、どこが得をしたのか

ユニー・ファミリーマート・ドンキグループは、短期間のうちに統合が進んだ。2016年9月にファミリーマートがユニーグループHDを吸収、2017年11月にはドンキホーテHDがユニーの株式40%を取得して役者が出揃った。ただ3社の思惑は微妙にずれており、今もそれは修正されていない。「ファミリーマートは、セブンーイレブンを追いかける上では、サークルKサンクスの店舗は、ノドから手が出るほど欲しかった。しかし、ユニーグループHDを吸収すれば、必然的についてくるアピタやピアゴのサバイバル策は持ち合わせていなかった。」

一方、「ドンキホーテHDは、長崎屋をはじめGMSチェーンが手放した店舗を次々に取得、連結売上高を7,000億円規模にまで大きくしていたが、年間30店舗程度の出店では、一気に売上をボリュームアップするのは難しかった。そこでドンキは、ユニーは地域的には少し中部に偏るが、ドンキのエンターテインメント型売場を導入すれば、ユニーの店舗をほぼまるまる吸収しても、3,000億円前後の売上の積み上げは可能と踏んだのだ。そこでドンキホーテHDは、2017年11月にユニーの株式の40%を取得する形で一気に勝負に出た。

ドン・キホーテ吉祥寺店

しかし、今回の主役3社のなかで悲惨だったのはユニーだ。同社は単独で生き残りを模索するなかで、最後は企業防衛の意味あいだけで、ユニーとサークルKサンクスを合併させてユニーグループHDとした。ただ、これは何らかの展望があったわけではない。つまり、ユニーには「アピタ」も「ピアゴ」、さらにはサークルKサンクスについても再建の決め手はなく、北風が過ぎるのをやり過ごすしかなかった。これでは東海のビッグチェーンとして、堅実に拡大してきたユニーとしては、知らぬ間に日本の小売ビジネスから退場せざるを得ない状況へ追い込まれつつあったのだ。ただ、当面の再編では,勝者に見える伊藤忠商事とドンキだが、このまま勝者であり続けられる保証はない。ともに年間営業利益が1,000億円程度確保できる間に、新しいビジネスを開拓しなければ、いずれジリ貧になってしまう恐れは十分ある。

ドンキホーテHDの西友買収はあるか?

ウォルマートが西友を売却するという報道が流れ、ウォルマートはお約束のように否定、やや沈静化したように見えたが、ドンキホーテHDの大原孝治社長が2018年6月期の決算発表会の席上「西友には興味がある」と洩らしたことで、再び火が付く形になった。

1956年11月に西武百貨店から分離して会社を設立、以後中央線沿線、西武線沿線でスーパーマーケットを多店舗展開してきた西友は、ダイエー、イオン、イトーヨーカ堂などに先んじてビッグチェーンとなっていった。野心満々の堤清二氏に率いられた西友は、東京を、やがて日本を代表するSMチェーン、GMSチェーンに成長していったのだ。つまり西友は、1950年代半ばから2000年代初頭にかけて、日本のSMチェーンとしてはエスタブリッシュメントそのものだった。

それが1989年に府中に1号店を出店以来、約30年の歴史しかない成り上がりのドンキホーテHDに買収されるというのは、日本人にとっては大好きなストーリーだ。しかも西友はここ15年ほどは、外資のウォルマート傘下にあったから快哉を叫んだ人も多かったに違いない。

しかし、ドンキホーテHDによる西友の買収は、それほど簡単ではなさそうだ。その理由の一つは、ウォルマートの西友売却額が3,000~5,000億円になるのではないか思われること。ドンキホーテHDの最近の実績は順調だが、売却額が5,000億円となると、かなりの借入金を積み増さなければならない。

また仮に買収金額は調達できても、西友にはGMS業態とSM業態があり、ドンキとしてはGMS業態の一部しか活用できない可能性もある。そうなると実質買収金額は高いものにつく。仮に買収後にSM業態を3~4社に分社化し、運営効率を上げようとしても、西友社内にもドンキにもスーパーマーケットを運営できる人材はいない。そのように考えると、ドンキホーテHD単独での西友買収は難しいかもしれない。

冷静に判断すれば難しいことがわかるドンキホーテHDによる西友買収だが、大倉社長の談話によってにわかにリアリティを持つようになった。それはドンキに運営の主導権が移ることによって、売上が大きく上向く店舗が続出したことも影響している。例えばダイエー立川店からドン・キホーテ立川店に転換した事例。ユニーの実験6店舗も1階の最も目立つ場所を、ドンキ方式の売り方に変えることで5割近く売上が伸びた。立川市錦町のファミリーマートも活性化した。

これはドン・キホーテの圧縮陳列をを採用することで品目数が増え、楽しく買物できるうえに、商品選択の幅も広がったから。逆にいえばGMSのように整然とした売場をつくったからといって、顧客に支持されていたとはいえず、売る側の自己満足に終わってしまっていたケースもある。

ドン・キホーテになって売上が伸びるのは、「夜店効果」もあるといわれている。ドン・キホーテの夜間営業は安田隆夫氏の時代にさかのぼるが、当初から高実績を記録した。それに対して大型GMSは、11時、12時までの夜間営業を行った時期もあったが、どちらかといえば店舗を開けているだけで、客数は増えなかった。ところがドン・キホーテの夜間営業は、マイルドヤンキーをはじめ昼間とは全く違う客層のお客さまを集客、売上を積み上げた。

つまりドン・キホーテは、圧縮陳列やPOPによるエキサイティングな売場づくりや夜間の営業で顧客の複層化に成功、売上は2018年6月期で9,415億円まで拡大してきたのだが、どうしてもディスカウントストアのイメージが抜けないため、広域商圏が必要。したがって、たとえ西友を割安で買収できても、現状の西友の店舗すべてを運営できるだけのポテンシャルはない。

楽しい旅行、楽しくない旅行

食品・雑貨&サービスの新トレンド今回から少し守備範囲を広げ、レストランや居酒屋などでの食事や旅行についても、エンターテインメントについて考えてみたい。私の出身地は淡路島(兵庫県)であり、観光立島を目指している部分がある。とはいえ、淡路島にいたのは18年余であり、東京暮らしの47年と比較すると、東京での生活のほうがはるかに長くなった。しかし、まだ島に兄姉や友人・知人が残っているので、事情が許せば恩返しをしたいと思ったりするが、なかなか厳しい。

今年6月にも神戸市西区へ行く用事があり、淡路島へも帰ったのだが、あまりエキサイティングではなかった。1998年に明石大橋が完成、神戸淡路鳴門自動車道が全通して、マイカーやバスでの移動が可能になった。淡路島の入ってすぐの場所にある淡路サービスエリア(SA)では観覧車が回り、それらしい雰囲気を出している。しかし、観覧車は土日祝日しか動いておらず、SAのレストランをはじめとする各施設は閑散としている。

6月に帰ったとき、淡路SAの食堂で、遅い朝食として天丼と小うどんのセットメニューを食べたのだが、残念ながら感想は、高くてまずかった。これはSA価格ということもあるが、国道28号線沿いのロードサイド商業集積地でも変わらない。これは1日の客数が都市部に比べると少ないから、価格を高くしないと利益が出ないという理屈だ。人口増加時代のロジックでもある。ただ高くてまずいものを食べさせられる客のほうはたまったものではない。逆にこのメニューがこんな価格で食べられるのかといった感動や、こんなめずらしいものを見ることができたという発見があれば、神戸から1時間以内で来られる淡路島はもっとリピート客が増えるはずなのだ。

最悪は夏の観光シーズンに高いお金を払ってホテルや旅館に泊まっても、エビフライやマグロの刺身が出てくること。最近淡路島では瀬戸内の近海魚が減り、食事を提供する側としては、皿数を確保しようとすれば、冷凍流通が整備されているマグロやエビに頼りたくなる。しかし、マグロもブラックタイガーも瀬戸内海では一切取れない。にもかかわらず、干からびたマグロの刺身や揚げるだけで一品になるエビフライが出てくると興ざめ以外の何物でもない。それよりも名産のタマネギや、最近増えているハモを使った一品が出てくる方がはるかにうれしい。

もう一つ淡路島の観光事業を見ていて感じるのは、淡路島を売り込もう、ファンになってもらって何回も来てもらおうという熱意が感じられないこと。最近、街を歩いていると「淡路島カレー」の看板やのぼりを見かけるようになってきた。現在「淡路島カレー」は、29都道府県の110店舗で食べることができる。この商品は、NPO法人淡路島活性化推進委員会が製造、(株)ビープラウドがNPO法人の会員になってくれたレストランやカフェに販売している。ただ現在の展開を見ると「淡路島カレー」というブランドが前面になっているあまり、「淡路島」そのものの印象が薄くなっている。

しかし、本当に大事なことは、観光客に淡路島に来てもらい、島の空気のなかで「淡路島カレー」を味わってもらうこと。これは北海道の夕張の空気のなかで食べる夕張メロンが最もおいしいといわれるのと同じだ。そのために例えばタマネギを1個まるまるグリルした「特製淡路島カレー」をつくり,このカレーを食べに淡路島に行ってみようかと思ってもらうことが大事。こうしてリピーターや交流人口が増えれば、淡路島のさまざまな産業が活性化、それが新たな会社の設立につながり、島全体の活力が増す。現在、島内で淡路島カレーは5店舗で食べることができるが、メニューの一品として扱っているに過ぎない。

できれば全国各地でラーメンをはじめとして、さまざまなB級グルメの有名店が育っているように、淡路島カレーも島内に有名店を育てたい。来日しているインドやパキスタン人に島内で起業してもらってもいい。その際重要なことは、国道沿いの便利な場所だけではなく、観光客がカーナビを見ながら、探し探し行く方が達成感があっていいということだ。

いなげや練馬関町店「開店50日祭」の反響

食品・雑貨&サービスの新トレンド2018年夏は、例年以上に猛暑に翻弄されている。西日本の大雨による水害、逆回りの台風12号、そしてそれ以外の日は、気温が35度を超える真夏日が続き、夜12時を過ぎても30度以下にならない熱帯夜も多く、今夏は疲れが取れない気候となっている。

そのような状態となっていることもあり、スーパーマーケットをはじめとする小売業は売上ははかばかしくない。東京でも早いときには朝7時台に30度を超え、昼2時台には連日35度を超える日が2週間近く続いた。この結果、ただでさえアイドルタイム化することの多い、昼2時頃から夕方4時頃までは、来店客は極端に減少する。カンカン照りの上からの太陽と、アスファルトからの反遮熱で、この時間帯に外出すると、熱中症にかかる確率は高くなる。

当然、小売業としては、あの手この手でお客さまの来店を促している。今年5月26日に開店したいなげや練馬関町店でも、オープン8週目の7月22日の日曜日に「開店50日祭」を実施、給料日前に、賑わいを喚起しようとした。

いなげやの「開店50日祭」のメーンになったのが午前11時から行われた「生本まぐろの解体実演販売」。開店から12時までのタイムセール商品として枝豆1袋198円、もも2個298円、国産味わい健康牛300g-1,000円などかなり思い切った価格設定になっていた。夕方のお刺身7点盛1,500円、仙台黒毛和牛サーロインステーキ半額セールもかなりのインパクト。ワイン15%引きセールはいうまでもなく、霧島湧水うなぎ長焼き一お1,780円も競合店と比較すると500~600円安かった。

しかし、いなげや練馬関町店の「開店50日祭」は、笛吹けど踊らずの状態で成功したとは言い難い。同店は千川上水をはさんで武蔵野市と練馬区の市区境にあり、住所は練馬区になる。しかも同店は18年12月には入居が始まる大型マンションの商業棟である。したがって500m圏内約5,000世帯のうち1割弱が未入居というハンデを持っての開店だった。つまりいなげや練馬関町店は、猛暑とマンション入居に先立つ先行オープンという二重苦が響き、厳しい推移となっているのだ。

今回の「開店50日祭」のうち、午前中のまぐろの解体実演販売は見逃してしまったが、午後2時過ぎに覗いてみた限りでは、集客は十分とは言い難かった。時間的に暑さのピークにあるため,店内はガランとしており、午前中のタイムセール商品もたっぷり残っていた。まぐろの解体実演販売のようなインパクトのある販促を実施しても、「開店50日祭」のようななじみのない販促では集客力は限定されるようだ。

母の日プロモーション

今年の「母の日」は明日5月13日だ。今日の朝刊のチラシは「母の日」関連のものが多かった。

やはり「母の日」は売場で楽しいリテールテイメント要素の強い販促が必要だ。

アメリカから輸入した生活歳時で、最も広く浸透したのが「母の日」であろう。戦前は皇后誕生日の3月6日が「母の日」とされたが、さすがにこれは定着しなかった。第二次世界大戦後、アメリカと同様5月第二日曜日が「母の日」となった。しかし、本格的に普及し始めるのは、それからさらに10年以上たった1962年以降だ。同年森永製菓が「森永母を讃える会」を設立、販促イベント化してからだ。その後「母の日」は日本でも国民的行事となっていったことは、説明するまでもない。それに対して6月の「父の日」は誰が音頭を取ろうと、ほとんど普及しなかったのとは対照的だ。

「母の日」と「父の日」にこれほど大きな差がついた要因は、戦後の日本社会では父親の権威が薄れ、母系中心の社会に変化したことと無関係ではない。つまり祖母―母―娘と続く母系こそが本流となり、父系はどこか影が薄い。遺伝学の学者のなかには、男は精子を提供するだけの存在であり、出産が終わればお役御免となると決めつける人もいるほどだ。要するに「母の日」とは、1年に1度母系の絆を再確認する生活歳時なのだ。

しかし、催事としての「母の日」は、妻からすると自分の親はコミュニケーションをしっかり取り、欲しいものをリサーチしたうえで、プレゼントを選ぶことが多いが、夫の母親の場合は、どうしても疎遠になりがちで、最大公約数的な無難なプレゼントが多くなる。せめて夫の母親とも最低限のコミュニケーションを取り、プレゼントを選んだり、モノではなく食事に誘ったりする方が、本当は喜ばれる。

 

 

 

SNSをうまく利用する

リテールテイメント・プロモーションは大きな話題になるが、それが伝わる範囲が来店客だけにとどまっていたのでは、効果は半減する。「マグロの解体ショー」であれ、「本格ベーコン予約セール」であれ、イベントの実施を拡散できれば効果は増幅される。

しかし、既存メディアによる拡散は、地方のNo.1リージョナルチェーンでもなければ難しい。有力リージョナルチェーンや有力ローカルチェーンは、地方のテレビ局にマークされているので、テーマがその時期の話題性にフィットしていれば取り上げられる可能性はある。

ただこのような他人頼みのアプローチでは、確実性がない。そこで最近さまざまな企業や団地で力が入っているのが、SNSの活用だ。ツイッターに写真を添付してアップしたり、インパクトのある写真をアップロードできるインスタグラムへの投稿が増えている。「インスタ映え」という流行語まで現れるような状況になっている。

したがって、土日2日間にわたって実施するプロモーションを土曜日の朝撮影して、その後の予定も含めて投稿すれば、インスタグラムを見ているユーザーの目に留まる可能性が大きい。そのうちの何人かでも来店してくれれば集客数は上がる。

SNSをうまく利用するもう一つの方法は、ヨドバシカメラはすでに実施しているように店舗での写真撮影を原則フリーにし、お客さまにインスタグラムなどへ投稿してもらうこと。この場合、お客さまが売場の写真を撮ったからといって、SNSに確実に投稿される保証はない。ただ、逆の見方をすれば、お客さまがどのような取り組みを評価して、それを他社に伝えたいと思っているかがわかって、今後販促を組み立てる参考になる。

三つ目の手法は、店舗が主導権を取る第一の方法と、お客さま主体の第二の方法の折衷案だ。これはお店サイドが、インスタグラムに興味を持つ、何人かのお客さまに自店のイベントを投稿するように依頼する、いわゆるモニター型プロモーションだ。この方法は自店のイベントがSNSに上がる確率は高い。しかし、時間が経つに伴い投稿が義務的になり、インパクトがダウンする傾向があるため、タイミングを見てモニターチェンジをすることは不可欠だ。

店舗の効率化と人員の重点配備

2018年1月にシアトルでオープンした「アマゾン・ゴー」をはじめとして、レジ無人化を視野に入れた店舗が増えてきた。技術的にはまだ、いずれの事例も万全ではないが、このままいけば、あと数年のうちには、レジがなくても代金を決済できる店舗が現実のものになることは十分考えられる。

しかし、レジ無人化店舗=省コスト店舗ではない。なぜならシアトルのアマゾンー・ゴーも、レジはないが、デリの作業場にはバゲットサンドやプリパックサラダを調理するスタッフが、通常の店舗以上に多いそれだけオープン時の同店の客数は多かった。要するにアマゾン・ゴーでは、レジで省力化できた人員を、デリなど手間のかかる部門に回し、顧客は待たなくても食べたい商品をスピーディに購入できる店舗をめざしているのだ。

したがってスーパーマーケットが、リテールテイメントを強化することによって売上増をめざす方向性は間違っていないが、それを実現するためにはIT技術やAI技術を活用したオペレーションの効率化を同時に達成しなければならない。なぜならマグロの解体ショーをはじめとする実演販売や食べ方提案を絡めた旬の食材の販売などは、それができる人材が必要なため、当然コストアップ要因になる。それだけに売上アップでコストを吸収すると同時に、オペレーションの効率化で掛けられるコストを増やす必要がある。

そういう意味では、無人化レジへの切り替えは大きなコストが浮いてくるので、売場でエンターテインメント提案を実施する予算を確保できる。仮に1日12時間営業で、レジ8台のスーパーでレジがフル稼働すれば、レジ要員は8台×12時間=96人時となる。つまり月30日営業として2880人時となる。時給1000円とすれば人件費だけで約290万円、年金などの諸経費を含めれば大変なコストダウンができる。

もちろん無人化のための設備投資は必要だが、1回で済むイニシャルコストよりも、ランニングコストのほうがはるかに大きいことはいうまでもない。つまりリテールテイメントで来店目的を明確にしつつ、楽しく買物できる店舗を実現するためには、新しいテクノロジーを活用したオペレーションの効率化がどうしても必要になる。

適材適所のマネジメント

リテールテイメント・プロモーションが効果的なことはわかるけれど、誰がわが社で対面販売できるのかと悩んでいるSMチェーンのトップも多いに違いない。その結果デモ販プロモーションについては、メーカーのデモ販提案に乗っかる形で導入しているチェーンがほとんど。そのため、どうしても来店客数の多い土曜、日曜、祝日などにデモ販が集中することになる。ただメーカーのデモ販を優先すると、新製品のプロモーションとしてはタイムリーでも、チェーンの販促としては、必ずしも最善の組み立てではないケースも出てくる。またテーマ的にも歳時や季節の旬に対応できていないこともある。

スーパーでメーカーのデモ販が中心になってしまうのは、これまでSMが自分で対面販促を組み立てることがなかったことも関係している。スーパーの販促といえば、催事スペースで商品を山積み展開したり、エンドで売れ筋商品を値引き販売するなど、商品のその時点のパワーで販売するのが主体であり、売場で商品について説明しながら販売するなどということはほとんどなかった。逆の言い方をすれば、日本のスーパーマーケットには、鮮魚を上手にさばいて刺身にしたり、切り身にしたりする商品づくりのプロはいても、販売のプロはいなかったのだ。

そのため日本のSM企業の人材育成では、店長やバイヤーを育てることが主体であり、プロの販売スタッフは必要ないというスタンスを取っていた。しかし、このような偏った考え方では、店舗マネジメントや商品政策に適性のない人は、成長できない、出世できないという持って生まれた能力による差別が生じていたのである。逆にいえば日本のSMチェーンでは、ある程度の年数が経つと、主任、店長に昇進する。しかし、店長として店舗をマネジメントする能力に乏しければ、その人は「能力なし」と判断され、出世争いから脱落せざるを得ない。

しかし、人間の能力は単純に店舗のオペレーションが上手だとか、バイヤーとして売れる商品を見つける目があるというだけではなく、お客さまと相対しながら、旬の商品をメニュー提案と関連させながら上手に売り込めるのも、スーパーマーケットにとっては不可欠な能力になる。そして、そのような能力のある人が、話術も覚え売場で笑いを起こしながら商品を販売できれば、まさにリテールテイメント・プロモーションになる。SMチェーンの人材育成の一つのコースとして、部下こそいないけれどプロの販売部長コースができれば、スーパーの販売力はこれまで以上に厚みが増すはずだ。

ショーアップリテールテイメント

リテールテイメントの究極の形としては、文字通りエンターテインメントで盛り上げる方法がある。例えば筆者が知っているイタリアンのレストランでは、マネージャーに「うちの誰それが誕生日なんです」と声をかけておくと、厨房の作業が終わるデザートタイムであれば、スタッフの一人がアコーディオンを弾き、イタリア人シェフまで加わって「ハッピーバースデーツーユー」の歌を歌ってくれる。

スーパーマーケットで同じことをやろうと思っても、少し無理があるかもしれない。逆にいうと、スーパーの従業員からすれば、安い給与なのにここまで過大な期待を持たれても困るということになる。しかし、ホールのケーキを予約してくれたお客さまがいて、子どもの名前を入れてほしいという要望があったとすれば、子どもの誕生日なのだなと察しがつく。そういうときは、誕生日かどうかを確認して「お嬢さんも一緒にケーキを取りに来られませんか」と声をかけてみる。一緒にケーキを取りに来てくれれば、ケーキ売場の従業員を中心に、手がすいている他の部門のスタッフも加わって「ハッピーバースデー」を歌い、誕生日を盛り上げるなど、楽しい展開ができなくもない。

これもアメリカのスーパーマーケットの事例だが、ケーキ売場で時間を決めてゲームを行い、ゲームで一等賞を取った人にケーキを1個プレゼントするというイベントを実施している事例もある。日本でもカスミのように、イートインスペースでシニアの体操教室を行い、健康をサポートすることで、シニア層の来店目的を明確にしているチェーンもある。

さらに最近は、新規出店でも集客数が予定に届かなかったりすると、平日でもガラポン抽選機などを使った福引を行い、来店促進を図る店舗も増えている。来店しただけでポイントカードにウエルカムポイントがつくチェーンも多いが、それより福引のほうが気持ちがウキウキする。強化したい曜日や時期を明確にできればより効果的だ。

また週1ぐらいの頻度で、お昼の11時半ごろから2時頃までのお昼の時間帯に、500円以上の弁当や総菜を購入されたお客さまは、売場のスタッフを捕まえて、じゃんけんして勝てば2割引きにするようなサービスをすれば、買物も楽しくなるし、総菜(弁当)や飲料の強化になるのではないか。

ショーアップリテールテイメントとは少し違うが、ボランティアを募集し、介護が必要な高齢者の買物サポートをすることで、高齢者のクオリティオブライフ(QOL)を上げてもらうことが、今後はスーパーマーケットをはじめとする小売業の一つの役割になっていく可能性が高い。クルマ椅子がなければ動けない介護が必要な高齢者も、時にはスーパーなどで商品を見て生活の質を上げたいもの。その際、地元の中・高校生がサポートする側に回り、一緒に買物してあげれば、施設の食事では得られない楽しい食品との接点ができ、気持ちが若返ることもある。