リテールテイメント・プロモーションが効果的なことはわかるけれど、誰がわが社で対面販売できるのかと悩んでいるSMチェーンのトップも多いに違いない。その結果デモ販プロモーションについては、メーカーのデモ販提案に乗っかる形で導入しているチェーンがほとんど。そのため、どうしても来店客数の多い土曜、日曜、祝日などにデモ販が集中することになる。ただメーカーのデモ販を優先すると、新製品のプロモーションとしてはタイムリーでも、チェーンの販促としては、必ずしも最善の組み立てではないケースも出てくる。またテーマ的にも歳時や季節の旬に対応できていないこともある。
スーパーでメーカーのデモ販が中心になってしまうのは、これまでSMが自分で対面販促を組み立てることがなかったことも関係している。スーパーの販促といえば、催事スペースで商品を山積み展開したり、エンドで売れ筋商品を値引き販売するなど、商品のその時点のパワーで販売するのが主体であり、売場で商品について説明しながら販売するなどということはほとんどなかった。逆の言い方をすれば、日本のスーパーマーケットには、鮮魚を上手にさばいて刺身にしたり、切り身にしたりする商品づくりのプロはいても、販売のプロはいなかったのだ。
そのため日本のSM企業の人材育成では、店長やバイヤーを育てることが主体であり、プロの販売スタッフは必要ないというスタンスを取っていた。しかし、このような偏った考え方では、店舗マネジメントや商品政策に適性のない人は、成長できない、出世できないという持って生まれた能力による差別が生じていたのである。逆にいえば日本のSMチェーンでは、ある程度の年数が経つと、主任、店長に昇進する。しかし、店長として店舗をマネジメントする能力に乏しければ、その人は「能力なし」と判断され、出世争いから脱落せざるを得ない。
しかし、人間の能力は単純に店舗のオペレーションが上手だとか、バイヤーとして売れる商品を見つける目があるというだけではなく、お客さまと相対しながら、旬の商品をメニュー提案と関連させながら上手に売り込めるのも、スーパーマーケットにとっては不可欠な能力になる。そして、そのような能力のある人が、話術も覚え売場で笑いを起こしながら商品を販売できれば、まさにリテールテイメント・プロモーションになる。SMチェーンの人材育成の一つのコースとして、部下こそいないけれどプロの販売部長コースができれば、スーパーの販売力はこれまで以上に厚みが増すはずだ。