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リテールテインメント入門<11>近海魚の強化で鮮魚を充実させる

●魚離れが進む日本人の食生活

中国、台湾、韓国などは魚への関心が高まり、サンマやサバでは1,000トンクラスの大型漁船で出港するようになっている。また冷凍設備の整った大型運搬船も導入、母港へ戻らなくても漁が続けられる態勢を整えて公海上で漁を行っている。これまで魚のおいしさに注目していなかった中国人も、そのおいしさに気づくとともに、13億人を支えるタンパク源に魚を位置付けようとしているのだ。

それに対して、最近の日本人の魚離れは著しい。統計上はこれまで大量にとれたイワシやサンマの漁獲量が減っているために、魚の消費量が減っているという説明がされていた。しかし、現実に魚が食卓に上る機会が確実に減少していることも事実だ。

2017年秋のようにサンマの水揚げが減り、1尾200円前後に張り付くと、メディアが先頭に立って大騒ぎしたが、仮に1尾100円を切ってもサンマを食べる機会が増えるわけではない。最近はガスや電気レンジも進化し、煙を出さずに脂の多い魚も焼けるようになっているが、それでも焼き魚は手間がかかるということで敬遠する主婦が多い。その結果、スーパーマーケットの鮮魚部門では、焼き魚や煮魚などの、おさかな惣菜が売れ筋商品になるトレンドになっている。

●二極化するスーパーマーケットの鮮魚部門

魚、肉のレンジアップ商品

スーパーマーケットの鮮魚売場で特徴的なことは、これが同じ業態かというほど店舗間格差が

大きいことである。百貨店に入っている専門店には及ばないが、かなりレベルの高い店舗がある一方で、秋であればサンマとマグロでお茶を濁しているような店舗もある。このように低レベルの鮮魚売場のスーパーが多いのは、鮮魚はロス率が高く利益を取りづらい部門だからだ。なかには「自慢ではないが、わが社の鮮魚部門はここ20年ほど利益を出したことがない」と豪語する鮮魚担当の役員がいるほどだ。

しかし、SMは鮮魚をあきらめている店舗が多い分、逆張りで力を入れると利益部門になると考えているチェーンもある。というのも鮮魚で勝ち組に入れば、店舗の商圏が広がり、客数が増える可能性が大きいからだ。また、鮮度管理のできた、おいしい魚を買ってくれるお客さまは、お金に糸目をつけず、魚を購入してくれるため、客単価がアップする可能性があるのだ。

そこで鮮魚強化のため、マグロ以下の全国流通の魚だけではなく、近海魚のMDを充実させたのがイオンだ。同社は全国各地の漁協と組み、獲ってきた魚の一艘買いを実施、生産者との関係を強化していった。定置網であれ底引き網であれ、狙った魚種とは違う魚も入ってくる。従来これらの魚は、「ゲテモノ」ということで廃棄されることが多く、1網換算の生産性を下げていた。したがって、イオンの一艘買いは、漁師にとっては有難い取引形態といえる。広島、岡山、香川の3県で急成長しているエブリイも地元漁協とこの一艘買いを行っている。

また売場づくりの面から鮮魚強化をアピールしているのがヤオコーとサミットだ。ヤオコーは大型店で鮮魚の売場を成果に続く通路に持ち込み、対面販売でライブ感のある売り方を行っている。一方、サミットは最近はオープンキッチンの鮮魚売場に氷敷き丸魚コーナーを設けて、臨場感のある売り方を行っている。

リテールテインメント入門<10>スーパーの寿司を牽引する魚屋のにぎり

●世界にスシになった日本のにぎり寿司

アメリカのスーパーマーケットでは、ミールソリューションの定着以来、イートインコーナーやテイクアウトしてすぐ食べられるデリカテッセンメニューが人気となっている。それらのデリカテッセン商品のなかで日本代表の存在感を示しているのが「にぎり寿司」だ。パブリックス、ホールフーズなどのなどのクオリティスーパーでは、ミールソリューションゾーンに必ずスシの対面売場が設けられている。

このスシ人気はアメリカだけではなく、イギリスなどのヨーロッパやアジア各国でも同じ。カリフォルニアロールのように欧米の人には異和感のある海苔を内側に巻き込んだ、独自の進化を遂げた巻物も登場してきている。また、盛り上がるインバウンド消費のなかで、来日観光客の寿司人気は高まる一方だ。中央魚市場は築地から豊洲に移ったが、築地には外国人向けの寿司屋が林立、銀座の名店ほどではないが、かなりいい値段を取っている。

●スーパーの寿司をリードする魚屋の生寿司

くら寿司武蔵野店

日本人にとっても、今ほどにぎり寿司が身近な存在になった時代はないのではないか。にぎり寿司は日本人にとっても、かつてはかなり敷居の高いごちそうだった。親戚や知り合いの家を訪ねたとき、出前の寿司を取ってもらい、思わぬ至福の時を過ごした人は多いのではないか。それが回転寿司の登場以来、にぎり寿司はすっかりカジュアルな食べ物になり、これまでとは比較にならないほど食べる機会が増えた。

持ち帰りの寿司もバラエティが増した。昔は京樽とか小僧寿しなど数えるほどしかなかった。しかし、最近は鮮魚専門店が、駅ビルやショッピングセンターに寿司専門店も同時に出店している。それだけではなく、スーパーマーケットの惣菜売場に行けば、ほとんどの店舗ににぎり寿司と巻物が並んでいる。その数は1万店舗を軽く超えているだろう。CVSチェーンも、時々、果敢に寿司にチャレンジするチェーンが出てくるが、鮮度管理の難しさがあり、定着するまでには至っていない。

鮮魚部門のにぎり寿司売場

またスーパーマーケットのにぎり寿司は、ここへきて品質アップが著しい。なぜなら主力の惣菜部門の寿司は使うネタが冷凍ものに限られ、それを解凍して握っているため、味の点で限界があるのだ。そこで最近増えているのが、生のネタを使った鮮魚部門―いわゆるスーパ―の魚屋さんのにぎり寿司だ。

惣菜部門のにぎり寿司が、安ければ8貫―500円でも買えるのに対して、同一店舗の魚屋のにぎり寿司は最低でも8貫―800円、ウニとか中トロが入ると980円前後まで売価はアップする。そして最近のスーパーマーケットでは、にぎり寿司に対するニーズが二極化しているため、500円のにぎり寿司も1,200円のにぎりもよく売れるのだ。ヤオコーの一部の店舗のように、鮮魚部門の寿司売場に、寿司屋の付け台のような演出を凝らし、楽しい売場づくりをしている事例もある。

リテールテインメント入門<9>スーパーの鮮魚の調理サービス

●サミットストア西永福店で始まった調理サービス

いまや日本のスーパーマーケットでは、鮮魚を三枚におろしたり、焼き魚、煮魚用に切り身にしたりといった調理サービスを行う店舗は当たり前となった。逆にいえば、丸魚を買って自宅でさばくお客さまは少数派。生ごみの処理を考えると丸魚を自宅で一から調理するのは勇気がいる。

ところでスーパーで、鮮魚の調理サービスが始まったのは、1999年のサミットストア西永福店が最初だから、まだ20年になるかならずだ。そう考えると、いまの浸透ぶりは目を見張るものがある。またサミットストア西永福店で、このサービスが始まったときは、鮮魚売場ではなく特設コーナーでのサービスであり、アジフライ用、イワシ煮魚用などメニュー別に下調理するようになっていた。確か30〜50円のサービス料金が必要だったように記憶している。

そういう意味でいえば、鮮魚の調理サービスが始まったのはサミットストアだが、その形態は大きく変わった。現在のように鮮魚売場がオープンキッチンになっている店舗が少なかった時代には、バックヤードの作業場の担当者と話ができるイヤホンがあり、「売場に出ているサバを三枚におろしてください」とお願いすると、担当者が出てきて、サバを持ち、後ろの作業場で調理してくれた。今のようなテンポのいいやり取りはなかった。

スーパーの鮮魚売場

●青果の調理サービスはどこまで進むか

鮮魚に比べると野菜の調理サービスは、売場ではまだそれほど実例はない。せいぜい売場に小さい作業スペースを設けて、レタスなど葉物野菜のラッピングをしたり、根菜類の袋詰め作業などの軽作業が中心だ。調理サービスというよりは売場ににぎわいを出すのが目的だ。

しかし、野菜の下調理をスーパーが代行している商品は以外に多い。最も身近な例が万能ネギのミジン切りだろう。味噌汁などの汁物やラーメンにと、万能ネギの利用場面は多いが、そのつど刻むのは面倒なもの。そこでスーパーでは機械でミジン切りにし、カップ詰して販売している。トンカツ用のキャベツのミジン切りもある。

またカットサラダや野菜炒め、肉じゃが、カレーなどのセット商品も増えている。オイシックスのキット商品がヒットして以来、こうしたセット商品は種類が増えている。さらにキユーピーの子会社、株式会社サラダクラブが市場を開拓した袋入りのカットサラダも急成長した。同社は19年前の創業から売上は一貫して伸び続けており、2017年度で売上高は252億円まで拡大してきた。

もう一つ注目されるのは、カットフルーツだ。これにはフルーツの需要が日本で伸び悩んでいるいることも大きく関係している。日本では果物をむくことを邪魔くさがり、バナナ、イチゴ、ブドウなどすぐ食べられるフルーツしか伸びていないなかで、カットフルーツの比重は今後ますます高まりそうだ。200円前後の価格で提供できれば、まだまだ需要は拡大しそうだ。

リテールテインメント入門<8>オープンキッチンで売場に広がりが出る

●鮮魚と総菜に多いオープンキッチン

昭和と平成のスーパーマーケットの違いはどこにあるのだろうか。売場づくりでいえば、平成時代に入ると、生鮮食品売場をオープンキッチンにするSMが増えたこと。レイアウトでいうと青果、鮮魚、精肉、惣菜、ベーカリーと続くスーパーマーケットが増え、第2コーナーの鮮魚、売場最終ラインの惣菜・ベーカリーをオープンキッチンにする店舗が標準的になってきた。

敷地に余裕があり、売場奥の背後にバックヤードを広く取れる場合は、ここに精肉のオープンキッチンを置く場合もある。ただ精肉は鮮魚ほどオーダーカットの注文が入らないため、オープンキッチンにしても効果があまりないのも事実。また精肉は、プロセスセンターで集中的に商品化し、それをトラックでデリバリーしてコストダウンを図っているSMチェーンも多い。

売場をオープンキッチンにするメリットは、いろいろある。まず一つは売場からバックヤードの作業風景がよく見えるので、商品づくりのスタッフは気が抜けず、緊張感を持って仕事をするのが当たり前になること。また鮮魚では、刺身などを商品化しているときは、ライブ感があり見ているだけで楽しい。

惣菜売場も揚げ物、焼き物などの作業風景をよく見えるようにして臨場感を出しているスーパーマーケットが増えている。天ぷら、フライなどは揚げているのを見ているだけでも楽しくなる。その場で焼きたてを提供する焼き鳥もライブ感に溢れている。また最近は惣菜の作業場に鉄板を入れ、お好み焼き屋焼きそばのほか、グリルしたミート惣菜の品揃えを強化いているSMも出てきた。サミットはグリルクッキングコーナーを独立させ、売場にバラエティ感を出している。

もう一つオープンキッチンにする効果は、売場が広く感じられること。同じ売場面積450坪のスーパーマーケットでも、生鮮部門の壁面が、すべてクローズドになっている店舗と、オープンキッチンタイプの店舗を比較すると、見た目ではオープンキッチンの店舗のほうが、2~3割広く感じるし、ライブ感もあるので楽しい。

リテールテインメント入門<7>小さな気づきが売上を積み上げる

●食品館イトーヨーカドーで気づいたこと

スーパーマーケットは進化を続けており、さまざまな新しい取り組みが始まっている。その一つが、JR中央線阿佐ヶ谷駅前の食品館イトーヨーカドー阿佐ヶ谷店に用意されている小さな買物カゴだ。これはイメージとしては、スーパーのお菓子売場に用意されているカゴと同じほどの大きさだ。同店ではこれを高齢者や仕事帰りの若い女性向けに用意、リアルタイムで必要なものだけを買ってもらっている。

というのは食品館イトーヨーカドー阿佐ヶ谷店は、毎日必要な食品だけを買物するお客さまが多く、大きな買物カゴでは、かえって邪魔になってしまうからだ。つまり同店では、翌日朝食に食べるヨーグルトとロールパンとか、帰って夕食に食べるおにぎりと煮物というように、そのとき必要な食品が入るぐらいの買物カゴのほうが利便性が高いのだ。

食品館イトーヨーカドーでは、もう一つびっくりしたことがある。それは練馬高野台店のオープンの時のこと。惣菜売場で商品を見ていたのだが、何か印象が違う。しばらくはその理由がわからなかったのだが、何分かするうちに「そうか!」とひらめいた。それは弁当や惣菜などの価格表示の数字の級数がやたら大きいのだ。通常の価格表示10倍はありそうな大きさで表示されている。これだけ大きいと加齢によって文字や数字が見えづらくなっていても、非常によく見える。高齢者にとっては有難い配慮だ。

そのときは、これぐらいの大きさが今後はメーンになるのではないかと思ったが、さすがに価格表示がそこまで大きくなることはなかった。しかし、弁当や惣菜の価格表示は、その後確実に大きくなり、見やすくなったことは間違いない。

●フレスタおかず工房のミカン

スーパーマーケット入口

広島のフレスタには、通常のスーパーマーケットのほか、売場面積200〜300坪の中型SM業態の「おかず工房」がある。そのうちの1店JR福山駅前の「おかず工房アイネス店」では、ミカンの季節になると、相場にもよるが1個50円、2個100円程度でバラ売りしている。

これはおかず工房アイネス、駅前立地で周辺にはオフィスがたくさんあり、若い女性のお客さまが多いため、デザートとしてミカンがよく売れるからだ。さすがに職場に10個パック、8個パックのミカンを持ち込みづらいので、バラ売りすることになったのだ。バゲットサンドとデニッシュのお昼ご飯を買ってくれたお客さまが、スイーツ代わりにミカンをついで買いしている。

リテールテインメント入門<6>気持ちの休まるサービスプロモーション

●日曜開店時の豚汁サービス

セブンーイレブンの「開いててよかった」とかローソンの「街のホットステーション」などは、いまや半世紀近く使われているキャッチフレーズだ。これらがアピールしているのは、どんな時間でも営業している、あるいはそこに存在する安心感だ。地方で夜道に迷ったときなど、遠くに明かりを見つけて、それがコンビニだった時のうれしいこと。つい最近もブラックアウトした北海道で、地元CVSチェーンのセコマ(旧セイコーマート)が自家発電で明かりを確保、ガス釜で炊いたごはんでおにぎり、弁当を調整して北海道の居住者や旅行客の災害直後の暮らしを支えたことが、大きな話題になった。このような店舗そのものがやすらぎとなるケースとは別に、スポット的にサービスプロモーションで癒しを提供している事例もある。(ただ取材から時間が経っているので、以下の事例は現在は中止されていることもあり得る)例えば宮城県北部の登米市や桑原市から三陸、さらに仙台市へ進出しているウジエスーパーの長町店では、仙台市へ1999年に進出したが、宮城県への最大都市への後発参入という事情もあり、秋冬の日曜日には開店時に、入店してくれたお客さまに豚汁をふるまい、寒い中並んでくれた人をねぎらった。その分、同店のスタッフは少し早く出勤しなければならないが、喜んでくれるお客さまの顔を見る楽しさは、何者にも代え難という。

●商店街でアイスコーヒーを無料でサービス

商店街でも顧客サービスを行っているケースがある。数年前岡山県の天満屋ストアが岡山市の表町商店街に都市型小型スーパーを出店したことがある。その取材にいったときのこと。少し時間があったので、表町商店街の一角の用意されたテーブルと椅子のコーナーで休憩していたら、レディースのアパレルショップから女性店員が出てきて「もしよろしければ、アイスコーヒ―をお飲みになりませんか」と声をかけてくれた。話を聞くとアイスコーヒーの無料サービスを行っているとのこと。時間がありそうな人には暑い夏場には、サービスしているとのこと。こうしたサービスが、直接売上アップにつながるわけではないだろうが、少しでもお客さまを増やそうとする取り組みには頭が下がる。

●大都市の商店街にも悩みはある

また郊外に顧客を奪われ、厳しい状況が続く全国の駅前商店街だが、新規客の開発のため、プロモーションを実施するところも増えている。その一つが松山市のお城近くの大街道商店街の取り組みだ。大街道商店街は、組合の販促実行体制が整ったきれいな商店街。ここでは夏場は早朝から午前中にかけて大街道商店街入口で、産直青果市を行い集客のフックにしている。販売されている野菜やたまごは、東京くらしの人間にとっては、びっくりするほど安い価格設定になっている。

地方都市だけではなく、首都圏でもエリア間競合はある。私の地元である武蔵野市では、中央線の駅順に吉祥寺、三鷹、武蔵境とあり、吉祥寺が圧倒的に優位に立っている。そこで武蔵境では、地元で栽培された唐辛子を料理に使った「唐辛子料理」に工夫を凝らした飲食店に参加してもらい「境のとんがらしうまからり―2018」を毎年9月、10月に実施している。これは集客力のある吉祥寺への対抗策でもある。

リテールテインメント入門<5>リハビリとしてのショッピング

つい最近まで飲食店や小売店だった建物が、老人ホームに建て替えられるというケースが増えている。高齢者の増加とともに、介護施設のニーズが高まっているのだ。また特別養護老人ホームには、各種補助金がついていたりして、うまみが大きいという事情があるケースもありそうだ。老人ホームに入ってくれれば、食事から介護まで施設が面倒を見てくれるので、家族の負担はぐっと下がる。

ところで特別養護老人ホームをはじめとする施設で暮らす高齢者が増えてくると、お昼過ぎから午後3時頃までのスーパーマーケットのアイドルタイムに、施設のスタッフやボランティアに付き添われて買物している高齢者の姿が目につくようになった。なかには軽い認知症の症状が出ている人もいて、付き添う人も大変だろう。重度の認知症の人は、病院への転院を要請されるケースもあるようだが、中にはショッピングによって記憶が戻ったりするケースもある。

例えば、老人ホームの食事には、デザートにプリンやゼリーが付いたりするのは当たり前だ。ただプリンといっても施設で出るものは、コストを安くするために、老人ホーム用の特性プリンがセットされることが多い。

しかし、スーパーマーケットに買物につれていってもらうと、洋日配売場に陳列されているデザートのなかに、江崎グリコのプッチンプリンを発見、その商品から「昔、子どもたちが好きだったわね」ということになり、かつての暮らしの記憶が蘇ってきたりする。これはコスト優先の施設のプリンにはない、メモリアルマジックだ。

つまり、老人ホームに入り買物する機会がなくなっている高齢者にとって、スーパーマーケットでさまざまな商品を目にしたり、イートインコーナーで紅茶とデニッシュでお茶したりすることで、気持ちが若返ったりする効果もあるのだ。したがって高齢化とともに施設に閉じ込めるのではなく、手間はかかるが買物や散歩に連れ出し気持ちを活性化させることも必要だ。自分の足で歩くか、車いすを利用するかは別にして、買物によるリハビリは馬鹿にできない効果がある。

SMチェーンとしては、老人ホームなどの施設と提携し、リハビリショッピングの受け入れをするのも、社会的意義の大きい販促になる。

ファミマ、ユニー、ドンキの新企業グループ誕生―得をしたのはどこか?

アメリカではシアーズが米連邦破産法11条を申請

3連休明けの10月9日週になって、日米とも小売業に大きな動きがあった。アメリカでは、かつて全米小売業トップに立ったこともあるシアーズが、米連邦破産法11条(日本でいえば民事再生法)を申請することが明らかになった。アメリカでは今年トイザラスも倒産したので、それに続く大手チェーンの経営破綻ということになる。

しかし、シアーズの経営破綻は、アメリカ小売業の変化を語るうえでは象徴的だ。シアーズは時代ごとに展開する業態は変わってきた。最後は百貨店とディスカウントストア(Kマート)が主たる事業だったので、それがともに衰退業態ということを考えれば、同社の倒産そのものは無理からぬものがある。とはいえ全米にまだ店舗網が整はない時代に、カタログ通販で基礎を築き、大型店の展開で全米一となったシアーズが、やがてネット通販のアマゾンなどに足元をすくわれたのは、時代のアイロニーを感じさせる出来事だ。

日本ではユニー・ファミマHD×ドンキHDの流通第3極が誕生

日本では同時期、ユニー・ファミリーマートHDがドンキホーテHDの株式の最大20,17%をTOBで取得、イオン、セブン&アイHDに続く事業規模4兆7,000億円の第3の流通グループが誕生することになった。ドンキホーテHDは、19年1月にユニーの株式の残り60%をユニー・ファミリーマートHDから取得、100%子会社とすることになった。同社は社名も「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」に変更することも発表した。また同社は、創業者の安田隆夫氏を、改めて非常勤取締役候補者にすることを決議、組織を挙げての取り組みとする方針だ。

しかし、ユニー・ファミリーマートHDからするとドンキホーテHDは、役員は派遣するとはいえ、持ち分適用関連会社にしかすぎず、企業グループとしての関係性は薄い。持ち分比率20,17%では競合他社が敵対的TOBを仕掛けて来れば防ぎようがない。ユニー・ファミリーマートHDとドンキホーテHDの企業連合は、イオンやセブン&アイのように、総合流通業をめざすうえで必要不可欠な業態を集めているわけではなく、かなり刹那的な流通グループだ。

今回の経営統合は、どこが得をしたのか

ユニー・ファミリーマート・ドンキグループは、短期間のうちに統合が進んだ。2016年9月にファミリーマートがユニーグループHDを吸収、2017年11月にはドンキホーテHDがユニーの株式40%を取得して役者が出揃った。ただ3社の思惑は微妙にずれており、今もそれは修正されていない。「ファミリーマートは、セブンーイレブンを追いかける上では、サークルKサンクスの店舗は、ノドから手が出るほど欲しかった。しかし、ユニーグループHDを吸収すれば、必然的についてくるアピタやピアゴのサバイバル策は持ち合わせていなかった。」

一方、「ドンキホーテHDは、長崎屋をはじめGMSチェーンが手放した店舗を次々に取得、連結売上高を7,000億円規模にまで大きくしていたが、年間30店舗程度の出店では、一気に売上をボリュームアップするのは難しかった。そこでドンキは、ユニーは地域的には少し中部に偏るが、ドンキのエンターテインメント型売場を導入すれば、ユニーの店舗をほぼまるまる吸収しても、3,000億円前後の売上の積み上げは可能と踏んだのだ。そこでドンキホーテHDは、2017年11月にユニーの株式の40%を取得する形で一気に勝負に出た。

ドン・キホーテ吉祥寺店

しかし、今回の主役3社のなかで悲惨だったのはユニーだ。同社は単独で生き残りを模索するなかで、最後は企業防衛の意味あいだけで、ユニーとサークルKサンクスを合併させてユニーグループHDとした。ただ、これは何らかの展望があったわけではない。つまり、ユニーには「アピタ」も「ピアゴ」、さらにはサークルKサンクスについても再建の決め手はなく、北風が過ぎるのをやり過ごすしかなかった。これでは東海のビッグチェーンとして、堅実に拡大してきたユニーとしては、知らぬ間に日本の小売ビジネスから退場せざるを得ない状況へ追い込まれつつあったのだ。ただ、当面の再編では,勝者に見える伊藤忠商事とドンキだが、このまま勝者であり続けられる保証はない。ともに年間営業利益が1,000億円程度確保できる間に、新しいビジネスを開拓しなければ、いずれジリ貧になってしまう恐れは十分ある。

リテールテイメント入門<4>こどもの遊び場の設置

最近スーパーマーケットでは、店内で販売しているベーカリーや惣菜を食べたり、コーヒーを飲んだりできるイートインスペースを設ける店舗が増えている。新店が中心だが、改装店舗でも可能な限り、イートインスペースを確保するケースも多くなっている。その要因としては、SMがかつてのように買物するだけの場ではなく、イートインスペースで友人や知人とおしゃべりしたり、軽食を取ったりとその利用ニーズが多様化している世の中の変化が背景にある。繁盛しているSMは高齢者はもとより、30代、40代の若いファミリー、20代の単身者と客層は幅広い。地の利が良ければ学校帰りの中・高校生が立ち寄り、イートインコーナーで自習して、お腹がすいたらカップヌードルを食べるといったオケージョンも生まれる。

ライフ調布店の子どもの遊び場

JR浦和駅東口のヤオコー浦和パルコ店のように、高校生、大学生の利用が多く、広いイートインスペースが時間帯によっては満席状態の店舗もある。ヤオコーでは、イートインコーナーへの来店で売上・利益を稼ぐのではなく、賑わいを演出できればいいと割り切っている。地方でも中・高校生のイートインコーナーの活用で、店舗の活性化をめざしているケースもある。

また最近は、イートインコーナーの見通しのよい場所に子どもが遊べるスペースを用意するスーパーマーケットが増えている。例えば幼稚園のママ友にあった母親が、イートインコーナーでコーヒーを飲みながら話し込んでしまったとき、子どもたちは5分、10分もすれば飽きてしまい、とても落ち着いて話しなどできない。ところが遊び場があれば、子どもたちは、かなりの時間遊んでくれるし、母親も自分の視野に子どもが入っているので安心していられる。

そういう意味でいえば、日本のスーパーマーケットは確実に進化していることはいうまでもない。かつてGMSや大型SMでは非食品売場の一角に子どもコーナーを設け、絵本や児童書を揃えて読み聞かせなども行っていたが、利用者の数は限定的だった。

それに対してイートインコーナーでの子どもの遊び場設置は、母親にとっても子どもにとってもメリットは大きい。見方を変えればリテールテインメントとは、楽しい売り方、体験的売り方といった一面的なものではなく、このイートインコーナーの事例のような、新しい利便性提供も含まれているのだ。

リテールテイメント入門<3>レジの変遷とお客さま第一主義

最近、商品の登録は店舗の従業員が、お金の精算は自分で済ませるセミセルフレジが増えている。レジの担当者からすると、お金を扱わなくなったため、現金をめぐるトラブルが減り、心理的に楽になったということだ。顧客のほうも、それほど難しい操作ではないので、おおむね好評のようだ。ただお客さまもいろいろな人がいる。なかには最後のレジでの精算は、旧来タイプのフルサービスにして欲しいという顧客も一定数いるため、最低1台のレジは旧来タイプにしている店舗も多い。写真のライフクロスガーデン調布店では、フルサービス、セミセルフ、入力も自分でするフルセルフの3タイプのレジをすべて揃えている。

さまざまなタイプのレジが並ぶ

セミセルフレジを採用する業種もスーパーマーケットだけではなく、広がりが出てきている。例えば筆者が時々利用しているベーカリーでもセミセルフレジを導入しているが、同店ではパンをトレーに裸で展示しているので、袋に入れてバーコードをつけるのは手間がかかるうえにフレッシュ感が損なわれる。そこで同店では画像認識のシステムを採用し、顧客が自分のトレーに入れたパンをその形で認識し、瞬時に消費税を含む合計金額がレジに表示されるようになっている。あとは顧客が現金を投入して精算、レシートを受け取れば支払いは完了する。スーパーマーケットはレシートを渡すのがマニュアルで決まっているが、コンビニではレシートを渡さないアルバイトが多い。これはレシートを持ち帰らない男性客が多いためだが、やはりレシートは基本的には渡した方がすっきりする。

しかし、レジの仕様変更では、1980年代後半に本格的に普及したPOSレジのほうがインパクトが大きかったように思う。それまで手入力していたのに、スキャンするだけでどの商品をいくつ買ったか認識できるのは凄いイノベーションだった。商品台帳の価格設定に間違いがなければ、精算ミスもない。手入力の場合は、100%完璧な入力はありえない。つまりお金をめぐるトラブルが急減したという意味でもPOSレジは画期的だった。

またPOSレジが普及することによって、レジは単なる生産機器から販売データが蓄積できるようになり、従来の感覚的販売管理が、POSデータに基づいた科学的販売管理に変わった。この結果、どの商品がどのように売れているかが明確になり、商品改廃は数字に基づいたものに変わった。さらに最近では、POSデータがID-POSデータ分析に変わることで、だれがどの商品を、どのようなオケージョンで購入したかが分析できるようになってきている。つまりPOSレジ以前と以後では、スーパーマーケットに並んでいる商品の消費者ニーズとのすり合わせ精度は確実に上がっている。逆にいえば、数字で明確に答えが出る分、SMのオーナーや担当者が売りたい商品が並ぶ確率が減少しており、SMの画一化が進行している。